安倍政権とジャーナリズム

Martin Fackler
 私がまず、指摘しておきたいのは、福島の原発事故が契機だと思いますが、安倍政権になってから、日本の全国紙やNHKにとって、新しいタブー、触れてはいけない問題がでてきたことです。
安保法案の成立過程においても、同じ事が言えます。
日本は平和主義の国であり続けたいのか、外国の軍事基地は必要か、アメリカと対等な同盟国になりたいのか、日本はどういう方向に行くべきか、こういう大事な論点に一生懸命、触れないようにしている。
原子力ムラより、更に大きな既得権益があるからでしょう。
今の官僚体制、自民党支配の全体に関わっている問題です。

 昨8月、朝日バッシングが起きたときに、本当におかしいと思ったのは、慰安婦問題を世界に広げたのは、朝日だという批判があった事です。
朝日ではない、安倍政権ですよ。
安倍政権慰安婦問題に言及しなければ、我々も書かないです。

 我々のガラパゴス化を如実に表していますね。海外では、元"慰安婦"の証言、それから例えば、オランダ政府の1994年の報告などを元に、"慰安婦問題"をみている訳です。朝日の報道など関係ないし、吉田証言に関する記事を朝日が取り消したからといって、海外の議論が影響を受けることもない。
この点を日本の新聞が伝えないのはおかしい。"慰安婦"問題はタブーであり、絶対触れてはいけない様になっている。

 アメリカの共和党と安倍政権を比較すると、例えば、KKKに対して、大多数の共和党員は"健全な保守ではない"
と距離をおいています。
安倍政権は極右の人達に事実上、青信号をだし、利用している。
放っておけば、いい方向に行くから、主導してると思わないですが、
日本が、中国を批判する時に、自らを『民主国家』であると言いますよね。
ところが、国内では民主主義の価値観を守ろうとしない。
これが、安倍政権の一番危険なところだと思います。

David Macneil
最近の傾向としては、日本の右翼は海外に自分達のメッセージを伝える為に、
海外のコメンテーターと連携しているのですが、そういう人たちが、日本にいる海外ジャーナリストや、特派員たちをバッシングするようになっています。
テキサス親父はよく知られていますが、
もう一人、マイケル-ヨンというタイの記者が日本にいる、海外特派員たちを選んで、バッシングしています。

 エコノミストでは、安倍さんの独占インタビューを一度、掲載したことがありましたが、事前に色んなやりとりがあって、面白かったのは、菅官房長官から、2つ条件を出された事です。1つは安倍さんを表紙に出して欲しい、もう一つは、この雑誌のスタイルである、批判的な風刺画みたいなものを使って欲しくないと、エコノミストがそんな事を言われたのは初めてでしたね。

 以上、一部を『世界』11月号から抜粋しましたが、気になる方は図書館へ行けばおいていると思いますので、是非。